TRAVEL 中欧編

一難去って 2001.5.7

なんとか無事に飛び乗った車両は、ブラショフから最初に乗った2等車と同じボロ車両。まっ...いいか、汚くてもコレで無事にソフィアまで行ければ御の字だ。Tassiを1等寝台車に案内した車掌は、いったいどういうつもりだったんだろう.....わからん。しばらくすると数人の車掌がやってきた。
チケットを見せると彼らはTassiに追加分の金額を要求した。おいおいそりゃないぜ。ブカレストまでの間に支払った事を告げるが、この車掌たちは支払われていないと言う。確かに座席指定のチケットはどこを探してもない。つまり支払った証拠は何もないのだ。
もし持っていてもブカレストで切り離された車両の座席番号など、今更何の役に立つのだろうか。車掌3人に囲まれた個室の中というのは条件が悪い。悔しいが払うしかないのか.....。さっきと同じ額でイイという車掌は、チケットの裏にボールペンで何やらなぐり書きをしてTassiの前から立ち去った。この国は車掌が代わる度に金を払うシステムになっているのか!!だんだん怒りがこみ上げてきた。

一人でいるから騙されるんだ、とにかく誰かと一緒にいよう。そう考えたTassiはあちこちを見回すと、車両の端にどこかで見た顔を発見した。彼はブラショフからしばしの間2等車で一緒だった男。
Tassiはすぐに荷物を持って彼のいるコンパートメントに移動した。彼はルーマニア人、もう一人同室の男はウクライナ人。これでしばらくは心安らかな時間が過ごせると思うとホッとする。しばしご歓談の後、列車はブルガリアとの国境にさしかかる。国境駅ではお待ちかねの税関とパスポートコントロールだ。早々と降りてしまったルーマニア人の後に残された我ら二人。
ウクライナ人は厳しくチェックされている。たぶん持ち込もうとする荷物が多すぎるのか、それともやばいブツでも隠し持っていたか。
「ワタクシは何も法に触れるモノは所有しておりません。量だってそれほど多くは.....。お役目ご苦労様でゴザイマス!!イエッサ〜〜!!」哀れなくらいに直立不動で応対している彼の言い方には、そう思えるぐらいの丁寧さが感じられた。
数回のやり取りの後、彼が税関の人間にそっと数枚の紙幣を渡すのをTassiは見逃さなかった。その役人はTassiに向かって「グッド・ラック」と意味深な言葉を残して去っていった。黙って金を出す人間には甘く、正論を通す人間からはあの手この手で搾り取る、というのがこの国の制服を着た連中のやることなのか。

ブルガリアに入国後、国境駅でウクライナ人は大荷物を持って降りていった。結局また独りぼっちになってしまったわけだ。イヤな予感がする。窓の外を見ながらボーっとしているとドアを叩く音が。振り返るとそこにはブルガリア人の車掌が立っていた。