TRAVEL 中欧編

災難は寝て待て 2001.5.7

「大丈夫です、宿には私が必ず予約の電話を入れておきますので心配ありません。ソフィアに着く夜の駅周辺は治安が悪いので、車で宿の人間を迎えにやらせます。タクシーもボルので使わない方が良いです。列車のチケットは私の知り合いの旅行代理店で発券してくれます」
ブラショフで泊まった宿のオーナーから親切に、それも日本語でそう告げられたTassiは、翌日の長旅を考え早めにベッドに入ったがよく眠れなかった。

翌朝駅の旅行代理店で手に入れたチケットは、コンピューターで打ち出したタイプのもので、たぶんルーマニアでは最新式(?)だと思う。通常窓口で発券されるチケットは、昔ながらの硬い小さい用紙に駅員が手書きで書くというかなりレトロなもの。自動改札はもちろん自動券売機などはないから、当然窓口の前には長蛇の列ができる。発車ギリギリに窓口に行こうものなら、まず必ず乗り遅れることは間違いない。中には順番待ちの列を無視して強引に窓口に突入にする人もいるが、大きなトラブルになっている様子もない。きっと急いでいるのね、とみんな鷹揚に対応しているように見える。前述のようにTassiのチケットは別ルートなのでかなりスムーズに発券できた。ただし席の予約はここでは出来ないので、車掌に追加分を支払うようにと告げられた。う〜〜んなんだかちょっと変......。

ソフィアまでは、「ブラショフ→ブカレスト→国境駅→ソフィア」というのがおおざっぱなルートである。まずブカレストで数両の車両が切り離され、ソフィア方面へ行く車両がいくつか追加される、という按配だ。まず2等車に乗車後しばらくして検札に来た車掌に指定席料金を払うと、Tassiは寝台の1等車に案内された。おまけにTassi一人で独占使用状態だ、やったぜい!これなら少しは寝ていける。なんてったって半日以上の長旅だモンね。ラクチンラクチン、起きたらそこはもうソフィア!!数時間後列車はルーマニアの首都ブカレストに到着。20分ほど停車して、いよいよソフィアへと出発するわけだ。ほとんどの乗客はここで降りた。人気のない車両に残されたTassiはごろりと横になり、ソフィアではどんな楽器が待っていてくれるのだろう....なんて考えながら、この停車時間がとても長く感じられた。

横の通路を通る駅員に「そろそろソフィアに向けて発車だね」と話しかけると、彼は「あんさん何言うてまんねん?」と言うような表情をして「この車両はソフィアには行かないよ」と素っ気なく答えて通り過ぎた。時計を見ると発車まであと数分だ。Tassiは急いで荷物を持ってホームに降りた。振り返るとああ愕然!そこには切り離された連結器があるではないか。思わず見上げるとTassiのいた車両には一人の乗客もいない。一体どういうことだ?心なしか車両が動いたみたいだ。やばいっ!Tassiは反射的に最後尾の車両に飛び乗った。