TRAVEL 中欧編

必要十分 2001.5.4

楽器のケースというのは時としてとても邪魔になるモノだ。以前Tassiはフラット・マンドリン2台入りのケースを特注したことがある。ケース屋が持ってきたモノを見て、まずその大きさにビックリした。乗用車のトランクに入れると、他の楽器は入らないぐらいに大きいのだ。おまけに自信作とばかりに頑丈に作られたせいか重さもハンパじゃない。象が踏んでも壊れないゾウ!もちろん値段もそれなりだったので、作った当初は無理して使っていたが、さすがに最近ではツアー専用になっている。自分では運ぼうとは思わないが、ツアーのローディー曰く、頑丈なので安心して積み下ろしが出来るということらしい。

写真のケース、軽そうでイイね。現在のケースのようにフタが開くタイプではなく、お尻から入れるスタイルがまたレトロ心をくすぐる。ケースとしての機能から言うとちょっと心許ないが、ふだん持って歩くのにはコレで十分だろう。



● またもや、呼ばれて飛び出てジャジャ........(バキッ!).....あ、も、もういいって?
フタタビお招きに預かり再々登場の鶴田です。今度はケースですか、しかも19世紀末〜20世紀初頭に多く見られるタイプですね。これまた何ともマニアな話題ですなぁ。じつは私も(「も」とはなんじゃ?)ちょっとしたヴィンテージケースコレクターでありまして、19世紀初頭〜現代までの変なケースはいくつか持っています。過去に楽器の修理などでいろんなタイプのケースも見ているのですが、それにも増して「ちょ〜変」なケースもまだまだ眠っているものと考えられます。19世紀には高級ギターケースとしては「布製の内張りコフィン(棺桶)ケース」が挙げられます、その他に「化粧紙の内張りコフィン(棺桶)ケース」なんてのがちょっとグレードが低く、さらに続いて革製、厚布製、紙製、薄布袋のケースなどがありました。木製のケースや革製の豪華なケースのなかには家紋や唐草模様が施され、職人さんが手塩にかけて作り込んだ逸品も存在します。

で、こういったオシリから入れるケースはすでに16世紀頃には存在していたようなんですね、17世紀のバロックギターのケースにも似たようなものがあります。この写真の楽器は典型的なウイーンスタイルですがケースは果たしてこのギター専用かちょっと疑問です(シェイプや全体の寸法が何となく合わない気がしまする)。マンドリンやギター用のケースとして1870年頃〜1920年頃に盛んに製造されたタイプですね。同じ形状の布製やチップボード(紙)製も同様に普及していましたが皮製のほうがちょっぴり高価でおしゃれといったところでしょうか。現存するものの多くはハンドルが間違いなく傷んでおり、持てない状態のものが一般的です。オシリのフタもくっついていればまだマシ。そういう意味ではこの写真のケースはまだ状態の良い部類でしょう。19世紀〜20世紀初頭のマーチンやワッシュバーンなどもケースのラインナップはだいぶ幅広いものだったようです。

昔の高級品の木製コフィンケースはちょっと重いです。チェリーやバスウッド、ボックスウッドのたぐいがケース材として使われていたようですが私の所有するいくつかのコフィンケースは2〜3kg前後の自重です。紙製のケースも計ってみたところ1.0kg前後。布製や革製も以前所有していましたがおおむね木製と紙製のあいだぐらいの重さでしょう。いすれにせよ現代のクラシックギター用ハードケースは重いもので5kg以上(軽量タイプは2kg前後)ありますのでこの写真のようなケースは貨物輸送用でなく移動用であれば必要充分にして好都合でオシャレなスタイルのケースだと思います。