TRAVEL 続編

演奏第一 1999.5.8

パリでもそうだったが、今度の旅で見かけたストリート・ミュージシャンのほとんどがアコーディオン弾きだ。まず音がでかい、次に伴奏とメロディーが一緒に可能、四角いので箱に入れてしまえば椅子代わりにもなる(?).....そんなところがこの楽器のよく使われる理由だろうか。しかし「集金用」の袋があんなに離れた所にあって大丈夫なんだろうか....。人ごとながら盗まれやしないかと心配になる。でもそれはTassiの思い過ごしだって事に気がついた。実はこれは彼の作戦だったのだ! ふつう楽器のケースやカンカラなどお金入れる容器は、演奏者の近くに置かれることが多い。なぜなら万一盗まれちゃったら困るからだ。でも彼は何ら心配していない様子。以前「侮れないトルコ」のところで書いたことを思い出した。「彼と袋」を遠巻きにして見物する観客の数は、袋が本人から離れているほど多くなる。計算の結果その安全な距離は、およそ2.5mと彼は割り出した。なるほど見るからにインテリそうな顔立ち。それにあまり生活感を感じさせないなあ。まっ、いいか。

もう一つの理由もある。ポケットから小銭を出したいが、本人の近くに行くのはちょっと気が引ける。そういうシャイな人も中にはいるだろう。おまけに一生懸命に訴えるような目で演奏されたりするとなおさら近づきがたい。そういう時離れたところに袋があると、通りすがり的にポイッと気楽にお金を置いて行きやすい。きっと彼としては深い読みだったはずだ。ああそれにしてもどうだろう、このやる気のない演奏態度は。ますます気楽にポイポイ小銭を出してしまいそうだ。

彼の失敗はまず場所選びにあったようだ。ここは交通量が多くそれにしては人通りの少ない所だったので、計算どうりにポイポイとはいかなかった。つまらない演奏がそれに輪を掛けていた。