TRAVEL 番外編

パリの恋人 1997.4.11

Tassiはいつも楽器を求めて世界をさまよっているワケではない。楽器屋じゃないんだからね(楽器屋以上だっていうウワサもあるが.....)。たまにはのんびりしたい、忙しい日本を離れ命の洗濯(ってほど仕事してるワケじゃないが.....)という目的もあるのだ。人の話し声も言葉が分からなければ特に気にならない。これが日本だったらそうはいかないだろう。パーな女子高生の馬鹿話や携帯の会話なんかが聞こえてくると結構気になるもんだ。ああ、語学に堪能でなくて良かった。

楽器探しも一段落つき公園のベンチでボーっとしていると、横では恋人達が何やら愛を語っている様子。ああそうですか....って感じでTassiはガイドブックを眺めて次なる場所を探してみたり。コトバが分からないっていうのはこういう時はイイですね。気が散らない。でも実は気になっていました。横目で見てみると「なんかエエ感じやんけ.....」。で、密かにカメラを取り出し、他を写すふりをしてシャッターを切る。
「ジャッキ〜〜ン!」わわわわわわっっっっ......スゴイ音が。Tassiのカメラは旧式なんでワインダーの音が金属的ででかい。愛の語り部達も驚いてTassiの方を見ている。「いえいえ!ワタシはあっちの景色を写したんですよ〜〜あっちの....」って遠くを見つめる横顔で訴える、冷や汗たら〜りでしたが。「フン」と言ったかどうかは知らないが、一瞬にして濃密な空間は散ってしまった。あああっっ、気がつけば一人。『わたしひとりの音させてゐる/山頭火』

「今日の晩飯はラーメンにするか......」ふとそう思った。Tassiはパリのサッポロラーメン屋「ひぐま」へと向かったのである。決して旨いワケじゃあない、高いしね。ただ無性に食いたくなったのである。次に来るときは最新式の音の静かなカメラにしようっと。スパゲッティーに似たラーメンを箸で口に押し込みながらそう考えた。