TRAVEL 番外編

出会い 1990.10.14

ローマの街中には大小いくつかの広場がある。その中の一つ、ここナヴォーナ広場でちょっと前衛的なパフォーマーに出会った。ギターを持ってはいるが彼の姿形からは「ミュージシャン」というより一人芝居の役者のにおいがする。しかし長い台詞のあとにギターをサッと取り上げ高らかに歌っていたので、ギターは単なる小道具ではなかったのだ。それが証拠にちゃ〜んと「F」のコードを押さえてますね。

しばらくここで彼のパフォーマンスを見ていたらTassiに話しかけてくるやつがいた。彼曰く「君は彼のパフォーマンスが理解できるのか...?」と。Tassiは何て答えようかと思ったが「もちろんさ!、実は僕もミュージシャンなんだ。彼の伝えたいことは十分に理解できるよ、コトバなんか解らなくっても.....」な〜〜んて口からデマカセを言った記憶がある。今考えてみると良くそんな事を言えたものだと思う。もう8年も前のことだから時効にして欲しいなあ......。まあそんなことがきっかけで、その彼と夕食を一緒にすることになった。

彼はイスラエル人、Tassiのメモ帳に名前を書いてくれたけど残念ながら読めない、特殊な文字だ。あっ、思い出した。「君の国の文字で書いてくれ」そう頼んだんだ。その時は名前を呼び合っていたから必要なかったんだな。レストランで彼は「昨日も一昨日も食事はチェスナッツ(栗)だけだった。だけど明日国に帰るから今夜は豪華な食事をしたいんだ」そう言ってパスタを注文した。また国のこと、家族、宗教、収入、イラクの侵攻......などなど、ずいぶん長い時間語り合った。ホテルの方向が同じだったので一緒に帰途についた。Tassiは宿泊先のホテルの不満を言うと、彼は自分の泊まっているホテルは安くてイイから、明日自分がチェックアウトしたらぜひ来るようにと奨めてくれた。翌日Tassiは即チェックアウトして目と鼻の先の安宿に移った。